水の精と、人間の男の物語
ルサルカ
ドヴォルザークによる三幕のオペラ。
波のように段になった舞台。日生劇場の壁を思い出す。そちらもきっと美しい舞台だったことでしょう。
人間の移ろいやすい情熱。
それと無縁の、冷たい水の中で生きる水の精。
人間を愛したがゆえに、水の精でも人間でもいられなくなってしまうルサルカ。
チェコには海はない。
代わりに森林の中に湛えられた湿地と沼。
ミュシャのスラブ叙事詩を観た時にも感じたが、一度海外で認められたアーティストが、自国のアイデンティティを民謡や民話などのなかに求め、創られた作品ならではの「強度」がある。
弦楽が美しいゆらぎとなって青い舞台を包む。
(全体に弦の存在感が非常に強いのだ)
一幕のアリア「月に寄せる歌」のはじまりのハープもとても印象的だった。
それにしてもなぜ、異類の愛を描く物語は常に女の方が人間ではないのだろう。
人間の浅はかさを描くのにそのほうが都合がいいのだろうか。
【公演詳細】
平成29年度(第72回)文化庁芸術祭賞優秀賞受賞作品 NISSAY OPERA 2017 オペラ『ルサルカ』(全3幕/原語チェコ語上演・日本語字幕付)
2018年1月27日(土)14:00開演 静岡市民文化会館 大ホール
指揮:山田和樹
演出:宮城 聰(SPAC)
合唱:東京混声合唱団
出演:竹多倫子、大槻孝志、妻屋秀和、与田朝子、秋本悠希、守谷由香、加藤宏隆、松原典子、梶田真未、池端歩、松原友
助演:赤松直美、黒須芯、小長谷勝彦、佐藤ゆず、大道無門優也、永井健二、坂東芙三次、若宮羊市(SPAC-静岡県舞台芸術センター)